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粉塵吸入と咳 世界貿易センタービルでの消防士の場合 ■粉塵吸入と咳 世界貿易センタービルでの消防士の場合 「9.11」というニコラスケージ主演、オリバーストーン監督の映画を観られた方はかなりの映画ファンと思います。さて、2001年9月11日に世界貿易センタービルの崩壊に伴い、消火、救出活動にあたっていた消防士は約一万一千名にのぼります。 この消防士の方達の一部の人達は、大量の粉塵を消火、救出作業中に吸い込みました。そして後遺症として咳に苦しんだ人が沢山でました。この人達の中からは長引く咳のために休職した人も大勢います。 さてこの「世界貿易センター咳(原文ではWorld Trade Center cough)」の実態を報告した研究があります。世界貿易センター咳とは粉塵に曝露されてから6月以内に咳のため消防業務から少なくとも4週間離れざるを得なかった人のことをさしています。救出活動に当たった人のうち、高度、中等度、低度と粉塵にさらされた消防士の人を三つのグループに分けて気道の過敏性(気管支がどれ位の刺激で反応して細く狭まるかのテスト)、肺機能の測定、胸のレントゲン写真をとりました。ちなみに高レベルの曝露とは世界貿易センター崩壊の現場にいた人、中レベルの曝露とは崩壊後から48時間以内に現場にいた人、低レベルの曝露とは3日目から7日目に現場にいた人のことです。 結果ですが検査を受けた10993名中、高レベル粉塵曝露1636名(16%)、中レベル粉塵曝露6958名(69%)、低レベル粉塵曝露1320名(12%)、粉塵曝露なし202名(2%)でした。高レベル曝露1636名中128名(8%)、中レベル曝露6958名中187名(3%)、低レベル曝露1320名中17人(1%)に4週間以上続くひどい咳が起こっており、休職していました。 咳は咳止め(コデインを含む)で治療し、必要に応じ追加の咳止めの薬として吸入もしくは経口ステロイド、抗炎症剤、抗生剤、ロイコトリエン拮抗剤(抗アレルギーの一種、薬品名モンテルカスト)、胃酸分泌抑制剤などが追加処方されました。気管支の過敏性(気管支がどれ位の刺激で反応して細く狭まるかのテスト)は高レベル曝露、中レベル曝露群でそれぞれ、23%、8%の人達で、亢進していました。また粉塵への曝露が多いほど気管支の過敏性が亢進していました。ちなみに「世界貿易センター咳(原文ではWorld Trade Center cough)」が出現した消防士の率は2001年9月で11%、10月で咳は32%、11月で33%と最高値を示しました。その後、急激に下がり、12月で18%、2002年1月に入り3%と急激に下がっていました。また、呼吸機能も「世界貿易センター咳」の患者では低下していました。このことは粉塵を大量に吸い込むと思っていた以上に長期間にわたり咳が残ることがわかります(図1)。また咳が残っている期間も4週間以上と長いのも注目されます。 またこの報告は短期間の粉塵曝露でも大量に吸い込むと、気管支の過敏性が亢進し、咳が出ることを示す点で重要です。また、世界貿易センター咳患者の87%と高率に逆流性食道炎(胃酸が食道内に逆流して炎症を起こすこと)が認められましたが、これは咳の原因となったか、もしくは咳を長引かせる要因になったものと著者らは推定しています。
2007年3月10日(出典NEJM.Vol.347.No.11 2002.p806〜p815) →メニューに戻る |