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禁煙と私(投稿文)
患者さんの中で禁煙に成功された方がいらっしゃいます。 「是非その貴重な体験を書いてください」とお願いしましたところ、 「禁煙を目指す方のお力になれたら」と投稿してくださいました。 以下、原文をそのまま掲載させていただきます。 ■禁煙と私(上京区 ペンネーム 六平太さん) 私の恥ずかしい禁煙の体験談をお話させていただきます。 今でこそ禁煙を達成したという安堵感と誇りに満たされていますが、禁煙までの過程は恥ずかしいものでした。 思い起こせば、タバコを始めたのは予備校に通っていた頃です。 今でも、授業の合間に友達と話しながら楽しんだタバコの味は忘れられません。 その時のちょっとした大人への憧れと好奇心が後々自分を苦しめることになるとは思ってもみませんでした。 一番最初に禁煙をしようと思ったのは22歳の頃です。 三日で挫折しました。 愛煙家の友人にそのことを言うと 「やめようと思うことがそもそも間違っている!」 と言われました。 それは禁煙を失敗した自分にとって、とても心地よい言葉でした。 「無理にやめてもしょうがない」 と自分を納得させました。 とはいえ、その後幾度となく禁煙にトライしました。 もう数え切れないほどです。 でも、だいたい一週間もてばいい方で、ひどい時は一日で挫折しました。 ある時、うかつにも「今度は絶対タバコをやめるから!」と公言してしまいました。 偉そうなことを言ったもののやはりタバコの誘惑には負けてしまい三日目の夜中に自動販売機に走る羽目になりました。 その後私は、隠れ喫煙者に成り下がりました。 そして、禁煙の話題の中に身を置くことがとても辛くなりました。 ましてや、「禁煙して偉いよね」と矛先を向けられるともう目は泳ぎっぱなしでした。 喫煙を誰かに見つかったら恥ずかしいというプレッシャーが加わり喫煙場所を探すのも随分苦労するようになりました。 肺がんになる心配と人に隠し事をしている引け目を感じながら喫煙を続ける自分に惨めな思いをしたのも確かです。 「こんな人生でいいのだろうか?」という呵責が随分と自分を苦しめました。 そんなある休日、何気なく禁煙を始めました。 表向きには非喫煙者なのでいまさら誰にも宣言する必要などありません。 誰にも言わないで始めた禁煙はとても秘密めいて気楽なものでした。 そして、二週間ほど経ったとき、歯の詰め物が取れて歯医者に通い始めました。 毎週通わなければならなくなった歯医者も禁煙を続ける理由になりました。 歯に対する健康を意識したというよりも、タバコを吸ったことを先生に指摘されるのが怖かっただけかもしれません。 そうこうしているうちに一ヵ月が経ちました。禁煙最長記録を更新する日々にとても充実した喜びを感じました。 二ヵ月目は、意外と楽に過ごすことができました。 でも三ヵ月が経ったころです、ちょっとした悩み事でイライラしたとき、すごくタバコを吸いたくなったのです。 「もう三ヵ月も経ったのにまだ自分はタバコを吸いたいんだ」と認識したとき、私は出口の見えないトンネルを歩いているのだと感じました。 いつまで我慢すればタバコの呪縛から抜け出せるのかという思いがとてもやりきれない気持ちにさせました。 「ここまで頑張ったのにもったいない」そんな気持ち以上に吸ってもいい理由を100ほど考え出す自分がいました。 「最近太ってきたしなぁ」「イライラするから吸ったほうがいいよ」「やめてもしょうがないんじゃないかな」「吸わない人にはわからないよ、この辛さは」 もうそう思い出したら、自動販売機の前に立っていました。 さすがにためらわれました。 「ああ、これで三ヵ月がふいか」とも思いましたが、吸ってもいい100の理由が私を支配して離しませんでした。 ついに私は三ヵ月の禁煙を破ってしまいました。 一口吸った瞬間に、頭がくらくらして気持ち悪くなりました。 「なんで、こんなまずいものを吸いたかったんだろう?」と思い直し残り19本のタバコをコンビニのゴミ箱に捨てました。 でも、1時間経ったらまた吸いたくなっていました。 さっきのコンビニに行ってゴミ箱から拾ってこようかと考えました。 自分がとても愚かに思えました。 でも、「一本吸ったのだからもう何本吸っても同じだ」と101個目の理由を思いつきました。 しかしなんとか我慢しました。それは、「もうこんなことで思い悩むことに疲れた」というのが一番の理由でした。 堂々巡りの苦しみから脱却するのは今だと思ったからです。 三ヵ月の禁煙はダテじゃありませんでした。 いつも失敗していた土壇場で自分を見つめなおす余力ができていたのです。 自分を苦しめたもう一人の自分に勝てたと思いました。 その瞬間、禁煙が完成したと思えました。 それ以来、嘘のように喫煙欲の呪縛が解けました。 後半の苦しみはニコチン中毒が原因ではなく、長年続けた習慣が自分を支配していたからかもしれません。 つい寂しくなったとき昔の恋人を思い出すような切なさがタバコにはあるのだと思います。 「いつまでも昔のことを引きずって生きるのは辛いでしょ」と今なら言える気がします。 随分苦労した禁煙でしたが得たものは沢山あります。失ったものは、ちょっと思いつきません。 私の経験を以下にまとめてみます。 【禁煙の心構え】 堅苦しく考えないほうが良いようです。人に宣言するとプレッシャーになります。 「絶対禁煙するんだ」という意気込みが「自分を追い詰めることになる」とは後で気がついたことです。 【始めるタイミング】 「禁煙でもしてみるか」と思ったときに自然体でスタートを切るのがいいですね。 特に長い休日の初日に始めると比較的初期の苦しみが軽減されます。 【吸いたい瞬間】 長年の習慣に基づきます。 私の場合は、休日よりも平日。 悲しいとか辛いとか嬉しいとか心に変化があったとき。 【禁煙の危機】 初日、三日目、一週間、一ヵ月目、三ヵ月目に山が来るような気がします。 三ヵ月目の山を越せば広い平野に出た気がします。 【禁煙で得たもの】 やはり健康に対する不安が軽減されましたし、禁煙を達成したという誇りと自信は何ごとにも変えられません。 月末にふと財布を見ると意外とお小遣いが残っていることにびっくりします。 【禁煙を破る瞬間】 必ずもっともらしい理由を考え付きます。 「禁煙する理由は無い」ということを自分に言い聞かせたいようです。 【禁煙しない人の常套句】 「禁煙する気がないのでしない。」 「いつでも禁煙できるから今はしない。」 【禁煙のポイント】 躓くことがあっても仕方ないと思います。 長年の習慣ですからすぐに抜けられないのは当然です。 一番大事なことは、躓いてもすぐに立ち直る勇気だと思います。 →メニューに戻る |